合氣道とは


阪大外国語学部合氣道部について

合氣道部は現在1・2・3年生・留学生あわせて11人で活動しています。創部45年を超える、関西の他の合氣道部の中でも長い歴史をもつクラブです。大阪大学と大阪外国語大学の統合以前は、大阪外国語大学体育会合氣道部という名称で活動していました。
平日は学生中心で練習を行っています。土曜日は合氣道7段の池田憲夫師範をはじめ、OB・OGの方々にもご指導いただいております。
合氣道独特の体全体を使って出る力・足の運び・体の動かし方に重きを置いて稽古をしています。筋トレも多少していますが他の運動系のクラブより頻度は少ないです。
夏合宿・春合宿では、スタミナと基礎体力をつけるために、多少の厳しさを伴う練習を行います。精神力を鍛えるためでもあります。一見きつそうに感じるかもしれませんが、これを皆で乗り越えた時の充実感は他では味わえないものがあります。
部の雰囲気は和気あいあいとしていて、とても楽しいものです。みんな練習が好きということもありましょうが、練習以外でも、何かと理由をつけて飲みに行ったり、誰かの家に押しかけたり、鬼ごっこをしたり雪合戦をしたりと、わいわいがやがややっています。


合氣道について

武道としての合氣道

合氣道は日本古来の伝統を備えた武道ある。武道には、昔から伝えられたものをそのまま踏襲する古武道がある。しかし、合氣道は古武道ではない。数多くの流派の古武術を極めた植芝盛平翁先生が、これらの古武術の奥義を統合して新しい武道として編み出したのが合氣道だ。従って合氣道は、古武術の奥義を一段と飛躍させた武道の集大成であると同時に、現代社会に即応しながら新しい工夫が加えられた現代武道なのである。
新しい武道としては、合氣道のほかに、柔道、剣道、空手道などがあるが、これらは競技としてスポーツ化する方向に進み、それぞれに繁栄している。しかし、合氣道は勝敗を争う競技スポーツの道は選ばずに(つまり試合がありません)、あくまでも武道精神を尊重し、しかも現代が求めるものに応えながら現代武道として発展してきた。合氣道の最大の特徴は、日本の伝統を伝えながら新しい息吹を吹き込んだ純粋な現代武道であるという点にある。

護身術としての合氣道

合氣道がいかに勝敗を争わぬからといって、武道である以上、護身術として役立つことはいうまでもない。人間、いつ、どこで、どんな災難に遭うかわからない。理由もなく関係もなく、突然、暴漢に襲われることもあるかもしれない。そんな時に反射的に身の危険を避ける無駄のない素早い動きは、合氣道独特のものだ。合氣道は力任せの技法ではなく、相手の力を合理的に利用する技法を基本にしているので、非力な人にも無理なくできるのである。
しかし、相手に立ち向かって制するだけが護身術ではない。女性なら、暴漢の出現しそうな場所、時間を極力避ける配慮、たとえ暴漢に襲われたとしても、冷静沈着に対処できる心づくりもまた大切で、それらは合氣道の日々の修練によって養われる。
最近の敵は、何も暴漢ばかりではない。暴走する車、頭上から落下する建築資材なども敵である。身に降りかかる危険に、瞬間的にはっと気づいて、無意識に素早く身をかわしたという経験者は、合氣道を修行するものにはたくさんいる。

心の健康法としての合氣道

合氣道を修行する者なら、誰でも思い当たることだが、合氣道の技法は自然の理にかなった動きからできているので、心身のバランスが自然にとれてくる。修行しているうちにストレスも解消される。性格的なゆがみも矯正されて、おだやかでしかも積極的な正確をつくってくれる。いわゆる外柔内剛の性格づくりに役立つ。何かにつけてとげとげしく、感情的な並みの激しいをよく見かけるが、合氣道を修行した者には、そうしたゆがんだ心の持ち主はいない。それに、共通していえるのは、合氣道に励む者に、見るからに暗い、陰性の人間はいない。みんな明るい。物怖じしない。これも、合氣道の技法が「気」によって心や体の力を外に出し切ることを基本にしているからで、暗い陰が心の中によどむことはない。

体の健康法としての合氣道

スポーツは勝敗を前提にして練習するから、その練習法は健康に良いとは限らない。勝つための筋力を強化し、勝敗に無関係の筋肉はないがしろにされがちである。勝つために役立つからといって、健康に役立つとは限らない。武道の練習でも同じことがいえる。しかし、合氣道は勝敗を争わない。全ての動きが自然の理にかなうように工夫されている。従って、バランスのとれた鍛錬法であり、そのまま体の健康法として利用できる。
近代化された現代生活では、本来動かすべき体の部分を動かさなくてもすむようになり、生活様式そのものが、健康に対して直接、間接の害を与えるようになってきている。合氣道の技法は、いつも動かすことの少ない関節や筋肉を、少しずつ無理なく動かして柔軟にするように工夫され、裏筋肉のしこりをとる。神経系にも適度な刺激を与え、血行をよくするので循環系の機能も活発にしてくれる。予防医学の立場からも大いに役立つ。

日本の伝統文化としての合氣道

戦後、日本は戦前の伝統を捨てて、ひたすら経済成長を目指して発展してきた。そして経済大国といわれるうになった現在、ふと振り返ってみると、確かに経済的なゆとりは出てきたが、わが身の精神的貧しさに気づいて愕然とするのが実情である。近年ようやく、敗戦を契機に置き忘れてしまったもの、見失ってしまったものの大きさに、今更のように気づき、従来の日本的伝統の中で、良いものは良いものとして率直に見直されるようになった。
日本民族には、伝統的に礼節、信義、清廉、剛健などを身に付ける人間教育を重んじる気風があった。よき伝統である。 こうした日本的伝統の中で武道として生まれ育った合氣道は、決して仰々しくはなく、ごく自然に行うことのできる伝統文化といってよい。
単に敵を倒すための武術としてではなく、人間練磨の求道であるからこそ、合氣道は日本の伝統文化として人々の共感を得ているのである。

(成美堂出版 「図解コーチ 合氣道」より抜粋)